横浜地方裁判所川崎支部 昭和49年(ワ)96号 判決 1976年7月14日
原告
新井こと朴英吉
ほか一名
被告
新興タクシー株式会社
主文
一 被告は原告朴英吉に対し金四一万六四八〇円及び金三一万六四八〇円に対する昭和四七年一二月二五日から、金一〇万円に対する本裁判確定の日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は原告徐文大に対し金一二七万一三〇〇円及び金一〇二万一三〇〇円に対する昭和四七年一二月二五日から、金二五万円に対する本裁判確定の日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用は、原告朴英吉と被告との間においてはこれを四分し、その一を被告の、その余の三を同原告の各負担とし、原告徐文大と被告との間においてはこれを一四分し、その一を被告の、その余の一三を同原告の各負担とする。
五 この判決は、第一、二項(但し、本裁判確定後の金員の支払いを命ずる部分を除く。)に限り仮に執行することができる。
事実
第一双方の求める裁判
一 原告
1 被告は原告朴英吉に対し金一八六万三八九三円及びこれに対する昭和四七年一二月二五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
2 被告は原告徐文大に対し金一七三六万七三二二円及びこれに対する昭和四七年一二月二五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 仮執行の宣言
二 被告
原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。
第二双方の主張
一 請求の原因
1 原告らは、次の交通事故(以下、本件事故という。)により、後記の損害を蒙つた。
(一) 発生日時 昭和四七年一二月二五日午前二時二〇分頃
(二) 発生地 川崎市川崎区中島町二丁目一四番地六号先路上
(三) 加害車両 横浜五五あ一三三一号
運転者 訴外 幕田功
(四) 被害車両 京四四す八一八九号
運転者 原告 朴英吉
同乗者 原告 徐文大
(五) 被告は、加害車両を所有し、これを自己のために運行の用に供していたものであり、その運行により本件事故を起したものである。
2 本件事故により、原告朴は第三、第四中手指骨骨折、左胸部打撲、外傷性頭頸部症候群の傷害を、原告徐は頸椎並に腰椎捻挫、頭部打撲、頸部損傷、外傷性頸腕症候群、腰部打撲の傷害をそれぞれ受けた。
3 右傷害により、原告朴は昭和四七年一二月二五日から昭和四八年一二月一三日まで通院加療し(治療実日数八一日)、原告徐は昭和四七年一二月二五日から昭和四八年三月五日まで川崎臨港病院に入院加療し、同年同月六日から昭和四九年一〇月八日まで太田総合病院の脳外科、眼科及び整形外科に通院加療したが(通院実日数四〇一日)、完治の見込みがなく症状が固定した。
4 原告朴の損害
(一) 休業補償費 金八一万二三三三円
同原告は、本件事故当時訴外永井商店こと永井和徳に勤務し、毎月一三万円の賃金収入を得ていたが、前記通院の一一か月一九日間の賃金一五一万二三三三円を失つた。しかして被告から休業補償金として金七〇万円の支払いを受けたので、なお金八一万二三三三円が残つている。
(二) 労働能力喪失による逸失利益 金一四万五〇八〇円
同原告は昭和二五年六月二九日生れの健康な男子であつたが、本件事故による後遺症は等級一四級九号に該当するので、労働能力喪失率は五パーセントである。そして右後遺症の継続期間は、昭和四八年一二月一三日から二年間である。そうすると、年間収入は金一五六万円であるから、これをホフマン式計算により中間利息を控除した逸失利益は金一四万五〇八〇円(金一五六万円×一・八六×〇・〇五)である。
(三) 慰藉料 金七〇万円
(1) 傷害による慰藉料は金五〇万円である。
(2) 後遺症による慰藉料は金二〇万円である。
(四) 通院費 金六四八〇円(通院日数八一日×往復バス代金八〇円)
(五) 弁護士費用 金二〇万円
5 原告徐の損害
(一) 休業損害 金一一六〇万七九七一円
同原告は、昭和四七年七月四日から川崎市川崎区駅前本町一四番三号において、主として訴外有限会社市吉工務店の下請けとして土木工事請負業を営み、本件事故までの約六か月間に金三二四万四四六八円の営業所得があつた。しかして同原告は本件事故後従前の仕事は全く不能となつたので、最終的に医師に症状固定と診断された昭和四九年一〇月八日までの二一か月一四日間の休業損害は、一か月の平均収入は金五四万〇七四四円となるから、金一一六〇万七九七一円である。
(二) 労働能力喪失による逸失利益 金三二三万八〇五一円
同原告は、昭和九年六月一九日生れの健康な男子であつたが、昭和四九年一〇月八日完治しないまま症状固定と診断され、現在後遺症として頭痛、頸部痛、肩部痛、腰痛、前腕しびれ感、不眠、めまい等の自覚症状があり、疲れ易く、正座ができず、坐位を長く続けられない状態であり、両眼の調節機能にも障害があり、従前の仕事に就労することは不可能となり、軽易な労務しか服することができなくなつた。右後遺症は少くとも後遺症等級一二級一二号に該当する。したがつて、労働能力の喪失率は一四パーセントであり、右後遺症の継続期間は昭和四九年一〇月九日から少くとも四年間である。そうすると、年間収入は金六四八万八九二八円であるから、これをホフマン式計算により中間利息を控除した逸失利益は金三二三万八〇五一円(金六四八万八九二八円×三・五六四三七〇四×〇・一四)である。
(三) 入院雑費 金二万一三〇〇円
一日金三〇〇円として入院期間七一日に要した諸雑費である。
(四) 慰藉料 金一五〇万円
傷害による慰藉料は金一五〇万円である。(なお後遺症による慰藉料として自賠責保険から金一〇四万円を受領している。)
(五) 弁護士費用 金一〇〇万円
6 よつて、原告らは被告に対し自賠法三条による損害賠償として、原告朴は前記損害金合計金一八六万三八九三円及びこれに対する本件事故日の昭和四七年一二月二五日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、原告徐は前記損害金合計金一七三六万七三二二円及びこれに対する本件事故日の昭和四七年一二月二五日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払いを求める。
7 被告の後記主張の過失の事実は否認する。本件交差点には加害車両の進行方向に一時停止の標識があるのに、加害者はこれを無視して時速約六〇キロメートルで直進して本件事故を惹起したものである。被害車両の進行方向には徐行の標識その他がない明らかな優先道路であつて、原告朴は約二〇ないし三〇キロメートルで進行したもので、なんら過失はない。
8 被告の後記主張の弁済の事実は認める。但し、原告らの本件請求は右弁済分を控除して請求したものである。
二 被告の答弁及び主張
1 請求原因1項の事実は認める。
2 同2項のうち原告らの受傷の事実は認め、傷害の部位・程度は不知
3 同3項の事実は不知
4 同4項の損害額は争い、その余は不知、但し原告朴に対し休業補償金として金七〇万円を支払つたことは認める。
5 同5項の損害額は争い、その余は不知
6 同6項は争う。
7 本件事故について原告朴に過失がある。即ち、本件事故現場は交通信号による交通整理の行われていない交差点であるところ、そのような交差点を通過する車両は左右の安全を確認し、かつ徐行すべき義務があるが、原告朴は交差点に進入する際左右の安全を確認せず、その徐行義務を怠つて、時速約四〇キロメートルで走行した結果、本件事故を惹起したもので、その過失の割合は三割を下らない。
8 被告は原告らに対し、次のとおり弁済した。
(一) 原告朴に対し
1 治療費 金二四万二三二〇円
2 休業補償 金七〇万円
3 後遺症補償(自賠) 金一九万円
(二) 原告徐に対し
1 治療費 金一四七万三五一六円
2 診断書料 金九〇〇〇円
3 コルセツト代 金一万〇五〇〇円
4 後遺症補償(自賠) 金五二万円
第三証拠関係〔略〕
理由
一 本件交通事故の発生の事実並に被告に本件事故について自賠法の帰責事由があることは当事者間において争いがなく、成立の真正について争いのない甲第二号証の一、二、同第一二、一三号証によれば、本件事故により、原告朴は外傷性頭頸部症候群、左第二、四中手骨骨折等の傷害を受け、原告徐は頸部並に腰椎捻挫、頭部打撲、頸部損傷、外傷性頸腕症候群、腰部打撲等の傷害を受けたことが認められる。そうすると、被告は自賠法三条により本件事故により原告らに与えた損害を賠償する義務がある。以下原告らの蒙つた損害について判断する。
二 原告朴について
1 休業補償 原告朴英吉本人尋問の結果、同尋問の結果により原本の存在並に成立の真正が認められる甲第四、五号証によれば、原告朴は本件事故当時訴外永井商店(店主廣川和徳)に建材運搬ダンプ運転手として雇用され、月給一三万円を得ていたが、本件事故のため事故当日から昭和四八年一月二五日まで欠勤を余儀なくされ、一か月分の給料の支給を受けなかつたことが認められ、同原告は本件事故のため一か月分の給料金一三万円を失い、同額の損害を受けたことが認められる。なお同原告は通院期間(一一か月一九日間)中の賃金を失つたと主張するが、右認定以上の賃金の逸失を認めるに足りる証拠はない。
2 労働能力喪失による逸失利益 原告朴は、本件事故の受傷により等級一四級九号相当の後遺症があり、五パーセントの労働能力を喪失したと主張する。前記甲第二号証の一、二、原告朴英吉本人尋問の結果によれば、原告朴は本件事故から約一年を経過した昭和四八年一二月一三日の受診の際、症状固定と診断されたが、当時なお項部に痛みを感じ、時に意識が薄れることがあり、運転を一時間位すると腰部及び頸部に痛みを感じ、頭がふらつくことがあり、現在においても肩部及び項部に痛みを感じ、腰椎がしびれるような痛みを感じ、本件事故前より疲労度が高く、一か月に二〇日以上の勤務が困難な状態にあることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はないから、同原告の精神機能に障害を残す後遺症が認められ、本件事故により事故前に比較して同原告の労働能力が減退したことが認められる。しかしながら、同原告がそのために勤務先の給料その他の得べかりし利益を失つたことを認めるに足りる証拠もないので、同原告の主張の如く単純に五パーセントの労働能力を喪失したとしてその損害を求めるのは相当でない。ただし、右の労働能力の減退を後記の後遺症による慰藉料において斟酌することにする。
3 慰藉料
(一) 傷害による慰藉料 原告朴英吉本人尋問の結果、前記甲二号証の一、二によれば、原告朴は本件事故による受傷のため訴外川崎臨港病院に本件事故日から昭和四八年一二月一三日までの間に八一日間通院加療し、症状が固定したことが認められ、右認定に反する証拠はない。そうすると、前記受傷の部位、右通院日数等を考慮すると、同原告の受傷による慰藉料としては金二〇万円をもつて相当とする。
(二) 後遺症による慰藉料 前記認定によれば、原告朴はその症状が固定し、なお後遺症があることが認められ、前記認定の後遺症の症状・程度、その他前記認定の労働能力の減退等を考慮すると、同原告の後遺症による慰藉料としては金三〇万円をもつて相当とする。
4 通院費 原告朴英吉本人尋問の結果によれば、同原告は主としてバス(往復バス代金八〇円)を利用して通院し、(最初はタクシーを利用した。)、少くともバス代相当金六四八〇円(八一日×八〇円)を支出したことが認められる。
5 そうすると、原告朴の本件事故による損害として前記合計金六三万六四八〇円が認定されるところ、原告朴に安全確認及び徐行義務違反の過失があつたと主張する。
成立の真正について争いのない乙第二ないし第五号証、同第六号証の四の一ないし五、同第七号証、原告朴英吉及び同徐文大各本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。原告朴は、本件事故当日(午前二時二〇分頃)、川崎市川崎区中島二丁目一四番六号先の交通整理の行われていない交差点に向け、大島五丁目方面から伊勢町方面に向う道路(幅員八メートル)進行中、前方に交差点を認め、その左右の見通しが悪かつたが、二〇ないし三〇キロメートルの速度に減速したのみで、格別左右の安全を確めることなく通過しようとして同交差点には入つた際、被告会社所属の運転手幕田功が自動車を運転して同交差点の右側の道路(幅員七メートル)を制限速度四〇キロメートルを越える時速六〇キロメートルの速度で同交差点に向けて進行してきた。幕田は進行方向に右交差点があること及びその手前に一時停止の道路標識があることに気付かずに直進し、同交差点の手前ですでに交差点には入つた原告朴の自動車を認め急制動の措置をとつたが間に合わず、同原告の自動車に真横から衝突して同車を横転させた。右認定に反する証拠はない。
そうすると、本件事故のあつた交差点は交通整理が行われず、かつ、左右の見通しが悪い場所であり、また交差道路の幅員からいつて原告朴の進行道路が幕田の進行道路よりも明らかに広いとはいえず、したがつて優先道路とはいえないから、原告朴は交差点には入る前に徐行した上左右の安全を確認すべきであつたのに、(それは幕田の進行道路に一時停止の道路標識があつたとしても、同原告の徐行義務を免除するものでない。)、同原告は交差点を認めて時速二〇ないし三〇キロメートルの速度に減速したのみで、それ以下で徐行し、かつ、左右の安全を確めずに交差点には入つた点において過失がなかつたわけではないが、同原告としては一応前方を注視し、かつ、交差点を認めて速度を減速して交差点には入つたのに対し、幕田は進行前方に交差点があり、かつ、その手前に一時停止の道路標識があるのに気付かず、しかも制限速度に違反して時速六〇キロメートルの速度でそのまま直進して、同車より先に交差点には入つた原告朴の自動車に自車を衝突させたものであるから、本件事故は幕田の一方的過失により惹起されたものと認定するのが相当であり、原告朴が自車を交差点に進入させる際、徐行せず、かつ、左右の安全を確めなかつたとしても、右を原告朴の損害認定の消極的要素として斟酌することは相当でない。したがつて、被告の過失相殺の主張は採用できない。
6 弁護士費用 原告朴について認容される損害の程度、本件訴訟の難易の程度等を考慮すると、弁護士費用としては金一〇万円が相当である。
三 原告徐について
1 休業損害 原告徐は、昭和四七年七月四日から有限会社市吉工務店の下請けとして土木工事請負業を営み、本件事故までの約六か月間に金三二四万四四六八円の営業所得があつたと主張し、原告徐文大本人尋問の結果、証人市川吉衛及び同鄭吉順の各証言、成立の真正について争いのない甲第七号証、同第九号証の一、二、証人市川吉衛の証言により真正に成立したと認められる同第八号証によれば、右主張事実を認めることができる。しかして同原告は、本件事故により有限会社市吉工務店の下請け業が全くできなくなり、症状固定と診断された昭和四九年一〇月八日までの二一か月余の休業損害として、前記営業収入による一か月の平均収入を乗じた金一一六〇万七九七一円を請求するが、土木工事の下請けによる収益というものはかなり不確定要素が多く、例えば給料生活者その他継続的収入の確実な業種と異なりその営業収益の見込みについて確実に測定できないものであるから、原告徐が有限会社市吉工務店から本件事故後も事故前と同程度に、若くはそれ以上に土木工事の下請けをして収益を上げ得る見込みがあることについて立証をしない限り、従前の収益をそのまま基礎とすることは妥当ではない。しかして右の立証がないので原告徐の主張する休業損害は採用できない。
2 労働能力喪失による逸失利益
成立の真正について争いのない甲第一二、一三号証、原告徐文大本人尋問の結果によれば、原告徐は昭和四九年一〇月八日症状固定と診断され、なお現在に至るまで項部、肩部及び腰部に痛みがあり、また前腕にしびれを感じ、視力(両眼の調整)に障害を残し、時にめまいを起し、疲れ易く、坐位の状態を長く続けられず、また正坐は全くできない状態にあり、労力を要する仕事はできないので、昭和五〇年四月頃から父の土建業の手伝いを一度したことがあつたが、体調をこわし、その後は父の職場で人夫を監督する仕事に従事して一か月に七万ないし八万円の収入を得ていることが認められ、右認定に反する証拠はない。そうすると、原告徐は精神機能及び両眼の調整機能に障害を残す後遺症があり、そのため相当に労働能力を減退したことが認められるのであるが、同原告は労働能力喪失による逸失利益として、同原告が本件事故前の六か月間の土木工事下請けによる営業収益を基準にして請求しているので、右を直ちに同原告の平均的収益とみてこれを逸失利益の基準とすることは首肯できない。例えば給料生活者その他継続的収入を得ているものであれば、事故当時の収入を直ちに基準としてよいが、右と異なる営業収益によつている原告徐についてはむしろ同原告の過去の少くとも五年間位の年間収入、その収入の推移その他をそう合的に考察して同原告の事故当時における平均収入を割出してこれを基準にして算定すべきであると思料するが、右による立証がされていない。したがつて、同原告の主張する労働能力喪失による逸失利益は採用できない。
3 入院雑費 成立の真正について争いのない乙第一〇号証の二におれば、原告徐は本件事故のため川崎臨港病院に事故当日から昭和四八年三月五日まで七一日間入院したことが認められるので、当時の入院中の諸雑費として少くとも一日金三〇〇円を要することは顕著な事実であるから、右入院期間中に合計金二万一三〇〇円の諸雑費を支出し、同額の損害を蒙つたものと認められる。
4 傷害による慰藉料 成立の真正について争いのない乙第一〇号証の三によれば、原告徐は前記受傷により退院後も昭和四八年七月二一日まで川崎市内の太田総合病院に九五日間通院し、更に昭和四九年二月一日から同年一〇月八日まで同病院に一八八日間通院して加療したことが認められる。そうすると前記受傷の部位、程度、入院期間及び通院期間等をそう合して考察すると、同原告の受傷による慰藉料は金一〇〇万円が相当である。
5 被告が主張する過失相殺が採用できないことは、前記のとおりである。
6 弁護士費用 同原告に認容される損害額、本件訴訟の難易の度合等を考察すると、本件事故の弁護士費用としては金二五万円が相当である。
四 被告の弁済について
1 ところで被告が、原告朴に対し、休業補償費として金七〇万円を弁済し、後遺症補償として金一九万円を保険より支出して弁済していることは当事者間に争いがないので、原告朴が被告に請求し得る損害額は、傷害による慰藉料金二〇万円、後遺症による慰藉料残額金一一万円、通院費金六四八〇円及び弁護士費用一〇万円の合計金四一万六四八〇円となる。(なお治療費を弁済していることは当事者間において争いがないが、同原告はこれを請求していないので、これは考慮しないことにする。)
2 そして被告が原告徐に対して損害の一部(治療費、診断書料、コルセツト代及び後遺症補償)を弁済していることは当事者間において争いがないが、同原告はこれを請求していないので、これは考慮しないことにする。そうすると、原告徐が被告に請求し得る金額は、入院雑費金二万一三〇〇円、傷害による慰藉料金一〇〇万円及び弁護士費用金二五万円の合計金一二七万一三〇〇円とする。
五 結び
よつて、原告の本訴請求は、原告朴に対し前記損害金四一万六四八〇円及び右金員から弁護士費用を除く残金三一万六四八〇円に対する本件事故日の昭和四七年一二月二五日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、弁護士費用金一〇万円に対する本裁判確定の日から同じく年五分の割合による遅延損害金を、原告徐に対し前記損害金一二七万一三〇〇円及び右金員から弁護士費用を除く残金一〇二万一三〇〇円に対する本件事故日の昭和四七年一二月二五日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、弁護士費用金二五万円に対する本裁判確定の日から同じく年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度において理由があり、これを認容するが、その余は失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 上村多平)